通信プロトコルは「コンピュータ間でお話をするための取り決め」のことです。
とはいえ、取り決めには色々な種類があります。
その取り決めを分かり易く表現したものが「OSI参照モデル」となります。
今回は、通信プロトコルの取り決めとOSI参照モデルの関係、さらにTCP/IPとの違いに関して解説します!
通信プロトコルとは?
先ず通信プロトコルですが、プロトコル(protocol)とは日本語に訳すと「仕様」「規定」の意味があります。
つまり、「コンピュータが通信を成立するための約束事」、となります。
コンピュータには様々な種類があります。
ハードウェアも違えば、OSやミドルウェア、ソフトウェアも違います。
PCもAppleやDELL、Lenovoなど製造元が違うので、普通に考えたら、通信できないと思いますよね。
昔は限られたコンピュータとの通信だけを考えれば良かったのですが、インターネットが流行し、コンピュータ間での通信が必須となりました。それを実現するための、ネットワーク構造の基本的な設計方針を決める必要がありました。
この通信をするための基本的な設計方針が「通信プロトコル」となります。
OSI参照モデル
さきほどの通信プロトコルには様々な種類がありますが、何の役割か分からずに各々が使うと通信は成立しませんね。
そこで、それぞれの役割に応じて階層に分けたものが「OSI参照モデル」となります。「OSI基本参照モデル」と呼ばれることもありますね。
OSI参照モデルは7階層に分かれており、一番下がよりハードウェアよりな階層で、上に上がるにつれてアプリケーションよりのプロトコルになっていきます。
ここは言葉で理解するより、図で理解する方が分かり易いので、先ずは以下の図でざっくり理解してみてください。
図でも分かる通り、一つ一つの階層にはそれぞれ役割があるのですが、ポイントは「3つの領域」に分けることができる点です。
OSI基本参照モデルの領域
- ソフトウェア : 第7層~第5層
- ネットワーク : 第4層~第2層
- ハードウェア : 第1層
7層から5層は一つのプロトコルで複数の階層を跨ったりしています。例えばFTPなどは7層にも6層にも該当しますので、7層から5層はざっくりソフトウェア用の階層なんだな、ぐらいに覚えておけば良いと思います。
さらにちょっとややこしくなりますが、図にもあるようにOSI参照モデルの各通信プロトコルを実現するネットワーク機器は「4つ」に分類されます。
OSI基本参照モデルのネットワーク機器
- ゲートウェイ : 通信プロトコルが異なる通信やインターネットの内部から外部の通信を制御
- ルータ、L3スイッチ : セグメントを跨ぐ通信を制御
- スイッチ、L2スイッチ : 同一セグメント内の通信を制御
- リピータ、リピータハブ : 電気信号の増幅や単純なパケットの伝送
一度にこれらを覚えようとすると頭がこんがらがるので、各階層の意味をちょっとずつ理解しながら覚えると良いですね。
「アプセトデネブ」で7階層を覚えよう!
OSI参照モデルは 情報処理の資格や試験で「OSI参照モデルを答えよ」、みたいな問題が出る時がありますし、やっぱり覚えていることは重要です。
6層から4層ぐらいが怪しい時がありますので、覚え易い「呪文(語呂合わせ)」があります。
「アプセトネデブ」で覚えよう
ただ、各階層の頭文字を繋げただけなのですが、意外とこれで覚えられます(笑)
歴史
1977年から1984年にかけてISO(国際標準化機構)とITU(国際電気通信連合)によって、メーカーごとに異なるネットワークアーキテクチャを1つに統一しようと検討がされ、その結果OSI参照モデルができたようですね。
つまり国際的の基準として策定されているモデルということですね。
TCP/IPとの関係
では、実際OSI参照モデルはどのように使われているのでしょうか?
実はOSI参照モデルは現在、使われていない!
「え?」って思うかもしれませんが、そうなのです。
OSI参照モデルを策定した当初、OSI参照モデルをベースにし、その規格に準拠した通信機器やソフトウェアなどが各メーカーで開発・製品化されていくはずでした。
しかし、このOSI参照モデルに準拠して機器を製造するには制約が厳しく難易度が高かったため、非常にコストと時間が掛かったのです。
そこに、「TCP/IP」という新たなモデルが1990年代中ごろから登場し、このルールが急速に普及したため、OSI準拠製品は普及しなくなってしまいました...
では、TCP/IP(ティーシーピー/アイピー)とは何なのでしょうか?
TCP/IPとは?
- OSI参照モデルをシンプルにしたもので、準拠した機器を作り易くなっている
- 通信に必要な機能を4つの階層に分類してある
- 4層アプリケーション層:アプリケーションの通信処理を行う
- 3層トランスポート層:通信の品質(セッション)を維持する
- 2層インターネット層:異なるネットワークの通信経路を制御する(WANのイメージ)
- 1層ネットワークインターフェース層:同じネットワークの通信を制御する(LANのイメージ)
ポイントはTCP/IPによって、プロトコルの区分で分けた階層構成になっていて、機能的に比較的単純で実装し易かったことと、十分な接続性を提供することができたため、OSI参照モデル準拠より、はるかに通信機器を作り易くなったため、広く普及したのですね。
なお、TCP/IPはISO(国際標準化機構)ではなく、米国国防高等研究計画局(DARPA)によって研究開発され策定されています。
まとめ
今回は通信プロトコルとOSI参照モデルの関係とTCP/IPの違いに関して解説してきました。
OSI参照モデルのまとめ
- 通信プロトコルとは「コンピュータ間で通信をする時のルールや取り決め」のこと
- OSI参照モデルは「通信プロトコルを役割に応じて7つの階層に分類したモデル」
- 現在、OSI参照モデルは使われておらず、使いやすい「TCP/IP」が普及している
OSI参照モデルの代わりにTCP/IPが台頭してしまった結果になっていますが、通信プロトコルの考え方や概念はOSI参照モデルが基本になっていますので、OSI参照モデルを知識としては覚えておくと良いですね。
今でも、ネットワークのことを考えるときにはOSI参照モデルやTCP/IPの考え方が役にたってますね。
学生の頃、アプセトネデブで7階層を覚えていたのが懐かしいです(笑)
以上です!